銀行員から転職するなら、行き先は担当業務で決めると迷いません。融資は経理・財務、渉外は営業、窓口は営業事務や接客の仕事が近い行き先です。ハローワークの令和8年8月の統計では、営業職の有効求人倍率2.05倍に対し、一般事務は0.29倍でした。
この記事でわかること
- 銀行員の経験が生きる行き先を、融資・渉外・窓口・後方事務の担当業務ごとに分けた表
- 行き先ごとの求人の入口の広さ(職業別の有効求人倍率・令和8年8月)
- 証券外務員・簿記・FPなど、銀行で取った資格を転職先でどう書くか
- 稟議・与信・自己査定など、銀行の言葉を一般企業の言葉に直す早見表
- 賞与・繁忙期と、退職を申し出る時期
公的情報源: 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)について」(参照・参考統計表PDF)/金融商品取引法・民法(e-Gov 金融商品取引法・e-Gov 民法)
先に答え
「銀行員の経験は外で使えない」と言われることがあります。けれど実際に使えないのは、行内でしか通じない言葉のほうです。数字を読む、期限どおりに書類を回す、お客さんにお金の話をわかりやすく伝える。どれも一般企業で毎日求められる仕事です。
行き先は「銀行員」という肩書きで探すより、自分が何の担当だったかで探すほうが早く見つかります。融資の人と窓口の人では、評価される経験も入口の広さもまるで違うからです。
この記事の要点
- 融資担当は経理・財務、渉外担当は法人営業・保険や不動産の営業、窓口は営業事務・受付・販売が近い
- 入口が広いのは営業(2.05倍)、狭いのは一般事務(0.29倍)。会計事務は0.55倍(令和8年8月・パート含む)
- 証券外務員は勤め先が登録して初めて業務ができる資格。銀行以外へ移るなら、資格名より扱った商品と件数で書く
- 職務経歴書では稟議・与信・自己査定をそのまま書かず、一般企業の言葉に直す
- 退職の申し出は法律上2週間前で足りるが、就業規則の期限と賞与の支給日を先に確かめる
銀行員の転職は難しい?求人の入口を倍率で見る
銀行員の転職が難しいかどうかは、どの職種を受けるかでほぼ決まります。ハローワークの職業別の統計で、行き先になりやすい職種の有効求人倍率を並べると、差がはっきり出ます。
銀行員の行き先になりやすい職種の有効求人倍率(令和8年8月・常用・パート含む)
| 職種の区分 | 有効求人倍率 | 銀行のどの経験が近いか |
|---|---|---|
| 職業計 | 1.06倍 | ― |
| 営業職業従事者 | 2.05倍 | 渉外・法人営業 |
| 接客・給仕職業従事者 | 2.31倍 | 窓口の応対 |
| 商品販売従事者 | 1.72倍 | 窓口での商品案内 |
| 営業・販売事務従事者 | 0.88倍 | 窓口・後方事務 |
| 会計事務従事者 | 0.55倍 | 融資・決算書の読み込み |
| 一般事務従事者 | 0.29倍 | 後方事務 |
出所: 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」参考統計表7
倍率が1倍を下回る職種は、求職者のほうが求人より多い状態です。一般事務は0.29倍なので、未経験の人と同じ枠で争うと苦労します。逆に営業は2倍を超えていて、銀行の渉外経験があれば有利に進められます。
ハローワークの数字は、転職サイトの求人を含みません。それでも、どの職種が混んでいるかを比べる目安になります。
担当業務別の行き先|融資・渉外・窓口・後方事務
同じ銀行員でも、毎日やっていた仕事で行き先は変わります。担当ごとに、外で評価される経験と、近い行き先を表にしました。
担当業務ごとの、評価される経験と行き先
| 担当 | 外で評価される経験 | 近い行き先 |
|---|---|---|
| 融資(法人) | 決算書の分析、資金繰りの把握、稟議書の作成 | 事業会社の経理・財務、経営企画、会計事務所 |
| 渉外(個人・法人) | 新規開拓、目標数字の管理、商品の提案 | 法人営業、保険・不動産・証券の営業 |
| 窓口(テラー・ローカウンター) | 来店客の応対、手続きの正確さ、商品案内 | 営業事務、受付・カスタマーサポート、販売 |
| 後方事務 | 期限どおりの処理、ミスの確認、マニュアル運用 | 一般事務、営業事務、金融機関の事務センター |
銀行での担当から行き先を選ぶ
- 肩書きの「銀行員」でなく、毎日やっていた仕事で選ぶ
- 融資決算書を読む→経理・財務・経営企画
- 渉外数字を追って提案する→法人営業・保険・不動産
- 窓口来店客に説明する→営業事務・受付・販売
- 後方事務正確に期限どおり回す→一般事務・事務センター
図:担当業務ごとに、近い行き先は別々になる。複数の担当を経験した人は、いちばん長く担当し数字で語れるものを軸にする。
融資担当は「決算書を読める人」として経理・財務へ
融資の経験でいちばん外に持ち出しやすいのは、取引先の決算書と資金繰りを読んできたことです。事業会社の経理・財務では、自社の数字を同じ目で見る仕事になります。
ただ、会計事務従事者の倍率は0.55倍で、入口は広くありません。仕訳や月次決算を自分で回した経験がない人は、日商簿記2級を持っていると話が通りやすくなります。
渉外担当は「数字を追ってきた営業」として外へ
渉外は、目標数字・訪問件数・成約までの期間を毎月追ってきた仕事です。営業職の求人は2.05倍と入口が広く、銀行の渉外経験はそのまま営業経験として読まれます。
保険・不動産・証券の営業は、扱う商品の知識がつながります。商品を売る相手が個人だったか法人だったかで、どちらの営業を受けるかを決めると絞りやすいでしょう。
窓口・後方事務は「正確さ」を数字にして事務・受付へ
窓口と後方事務の強みは、間違いの許されない手続きを毎日こなしてきたことです。一般事務は0.29倍と狭いため、営業事務(0.88倍)や受付・カスタマーサポートも並べて受けると、選考に進める数が増えます。
窓口で投資信託や保険を案内していた人は、販売・接客の求人でも説明の経験が武器になるでしょう。
銀行で取った資格の持ち運び方
銀行で取った資格の効き方は、転職先しだいです。資格名だけを並べるより、その資格で何をしたかを書くと伝わります。
銀行員が持っていることの多い資格と、転職先での書き方
| 資格 | 銀行での使われ方 | 転職先での書き方 |
|---|---|---|
| 証券外務員 | 投資信託などの勧誘に必要な登録 | 証券・保険・銀行へ移るなら資格名をそのまま。それ以外は「投資信託を〇件案内」と実績で書く |
| 日商簿記 | 融資の決算書の読み込み | 経理・財務の応募で資格欄に。2級以上は実務の目安として読まれやすい |
| FP(ファイナンシャル・プランニング) | 個人のローン・資産の相談 | 保険・不動産・住宅関連の営業で、相談の経験とセットで書く |
| 銀行業務検定 | 行内の昇格・研修 | 金融機関へ移るなら書く。一般企業では科目名より「融資実務を学んだ」と一言に |
証券外務員は勤め先が登録する資格
証券外務員は、金融商品取引法64条で、勤め先の金融機関が外務員登録原簿に登録して初めて業務ができる仕組みです。登録を受けていない人に外務員の職務をさせてはならない、とも定められています。
そのため、証券会社・保険会社・別の銀行へ移るなら、移った先で登録の手続きをとることになります。金融以外の会社へ移る場合、外務員の資格そのものは仕事で使いません。職務経歴書では、投資信託や債券を何件・どの客層に案内したかを書いたほうが伝わります。
職務経歴書で銀行の言葉を言い換える
銀行の職務経歴書がわかりにくくなる理由の多くは、行内の言葉です。採用担当が一般企業の人なら、銀行の言葉を、その会社でも使う言葉に直して書きます。
銀行の言葉と、職務経歴書での言い換え
| 銀行の言葉 | 職務経歴書での言い換え |
|---|---|
| 稟議書の作成 | 取引先の財務分析と、社内承認のための報告書の作成 |
| 与信判断・信用格付 | 決算書と資金繰りから、取引先の返済能力を評価 |
| 自己査定 | 貸出先の状況を定期的に点検し、リスクを分類 |
| 渉外・推進 | 個人・法人の顧客訪問による新規開拓と商品提案 |
| 預り資産の増強 | 投資信託・保険の提案による顧客資産の積み上げ |
| 後方事務・事務集中 | 振込・口座手続きなど定型業務の正確な処理と確認 |
言い換えたあとに、数字を1つ添えます。たとえば「担当先〇社の財務分析」「月〇件の新規訪問」「1日〇件の窓口手続き」です。銀行名・支店名は書いてかまいません。顧客の名前や取引の金額など、守秘義務にかかわる情報は書かないようにします。
銀行の経験を職務経歴書の1行にする手順
- 行内の言葉で書いた経験を1つ選ぶ(例:稟議書の作成)
- 手順1一般企業の言葉に直す「取引先の財務分析と社内承認のための報告書の作成」
- 手順2数字を1つ足す担当先の社数・件数・期間など(顧客名や金額は書かない)
- 手順3応募先の仕事とつなぐ経理なら「数字を読む」、営業なら「提案して承認をとる」と結ぶ
図:行内の言葉→一般企業の言葉→数字→応募先の仕事の順に書き直すと、銀行を知らない採用担当にも伝わる。
志望動機の書き方を職種ごとに確かめたい人は、事務職の志望動機と例文(未経験・一般事務・営業事務)も参考になります。
辞める時期と伝え方|賞与・繁忙期と申し出の期限
退職は、民法627条で、期間の定めのない雇用なら申し出から2週間で終わるという決まりです。ただ、勤め先の就業規則がもっと早い申し出を求めていることもあり、担当先の引き継ぎにも時間がかかります。
先に確かめておきたいのは次の3つです。
- 就業規則の申し出期限:何日前までに、誰に伝えるか
- 賞与の支給日と在籍条件:支給日に在籍していることが条件になっていないか
- 担当先の引き継ぎ:決算期・年度末など、担当先の手続きが集中する時期と重ならないか
内定が出てから退職日を決めると、転職先の入社日と合わずに困ることがあります。内定の前後で、入社日の希望を転職先にどう伝えるかを決めておくと安心です。面接で退職理由を聞かれたときの答え方は、面接での退職理由の言い方にまとめています。
よくある質問
Q1:銀行員の経験は転職で使えないと言われるのは本当ですか?
使えないのは経験ではなく、行内の言葉のほうです。決算書を読む、数字を追って提案する、正確に期限どおり処理する経験は、一般企業でも評価されます。職務経歴書で銀行の言葉を言い換え、件数や社数を添えれば伝わるはずです。
Q2:銀行員の転職先で多いのはどこですか?
担当業務によって分かれます。融資の人は経理・財務、渉外の人は法人営業や保険・不動産の営業、窓口や後方事務の人は営業事務や受付が近い行き先です。同じ金融業界の証券・保険へ移る道もあるでしょう。
Q3:資格がないと銀行からの転職は不利ですか?
営業職は資格より実績を見られることが多く、渉外の数字があれば十分に戦えます。経理・財務を目指すなら、日商簿記2級があると実務の目安として読まれやすくなります。持っている資格は、何に使ったかと一緒に書いてください。
Q4:50代の銀行員でも転職できますか?
できます。ただ、未経験の職種を一から受けるより、融資の審査や支店の管理など、長く担当してきた分野を前に出すほうが通りやすくなります。取引先の事業会社や、金融機関の事務センター・研修の仕事も候補です。
Q5:履歴書や職務経歴書に銀行名と支店名を書いてもいいですか?
書いてかまいません。在籍した銀行・支店・担当業務と期間を書き、業務内容は一般企業の言葉に直します。顧客の名前や取引の金額など、守秘義務にかかわる情報は書かないでください。
まとめ:担当業務で行き先を決め、銀行の言葉を直して書く
この記事のまとめ
- 行き先は「銀行員」でなく融資・渉外・窓口・後方事務の担当で決める
- 入口が広いのは営業(2.05倍)、狭いのは一般事務(0.29倍)。事務だけに絞らず並べて受ける
- 証券外務員は勤め先が登録する資格。金融以外へ移るなら扱った商品と件数で書く
- 稟議・与信・自己査定などは一般企業の言葉に直し、数字を1つ添える
- 退職は就業規則の期限・賞与の支給日・担当先の繁忙期を先に確かめてから伝える
※本記事は公的統計(厚生労働省)と法令(e-Gov)の公開情報をもとにした整理です。掲載の求人倍率は令和8年8月分の公表値で、ハローワーク以外の求人は含みません。個別の求人条件や転職の結果を保証するものではありません。退職の時期や賞与の扱いは、お勤め先の就業規則でご確認ください。

